先日、シンガポールのイスラム金融が急速にしぼんでいるというニュースを読んだ。理由はシンガポールのTax Incentiveの期間が終わったことと、隣のマレーシア、クアラルンプールのイスラム金融市場が急激に膨らんでいるということがある。金融業会のヘッドハンターですら、シンガポールからクアラルンプールに拠点を移しているようだ。
何を隠そう、このクアラルンプールはイスラム金融にとっての世界最大の金融センターなのだ。
マレーシアのSecurity Commission(証券取引委員会)によると、シャリアに関連する金融市場は年間15%も拡大している。貴方がいまケーキを食べてるとすれば4年経てばケーキがもう一個増えるって考えるとやはりすごいのではないだろうか。ドバイ、カタール、アブダビでもなく東南アジアのクアラルンプールが世界最大なのである。
以前は東南アジア最大、というか世界最大のイスラム金融債権を売っていたのは、HSBCであった。香港でお札を刷っている香港上海銀行が…なんか変な感じではあるが、世界はそうやってできている。2番目にSukuk(イスラム債権)を発行していたマレーシアのMayBankの約2倍は、Sukukを印刷していた。中東ではイギリス系の銀行であるHSBCとStandard Charteredが持っていたSaudi British Bankが最も多くのSukukをアレンジしていた。シンガポールにはHSBCとStandard Chartered、MayBankは支店があり、馴染みのある銀行である。
現在、サウジアラビアの
Al-Rajhi Bankもマレーシアに24の支店を持っているそうだ。もちろんクアラルンプールにもある。2006年に初のマレーシアに来たこの銀行はイスラム金融の銀行としては世界最大である。もちろん本国サウジアラビアでも主要なInvesterだ。
まぁとにかくクアラルンプールは盛り上がっているらしい。昨年は28億円分強くらいのSukukを発行して過去最高額だとか。そのニュースの文面にはSingapore seems to given up the ghostと書かれていた。give up the ghostを辞書で引くと「
1. to stop trying to do something because you know that you will not
succeed 」と書かれていた。
あぁ…イスラム金融ってなんぞやってことを説明するのを忘れてた…
イスラム金融とはイスラムの教義に基づいた金融システムのこと。
1.
イスラム金融では利子(riba)を貪ることを禁止している。
貴方はお金を貸した人はリスクを負うべき思うだろうか。イスラム教では貸し出した金額以上のお金を受け取ることは搾取や不公正な取引として禁止されている。
貴方が利子を取られたり、トイチの借金取りに追われることを禁止している。
2.ガラール
「胎内の子らくだ(不確実な価値)を見越して母らくだを売買してはならない」
不確実性が認められる経済活動は詐欺的な行為として禁止されている。
3.マイシール
投機的な行為は禁止
FXで借金地獄に落ちるのは禁止! パチンコ屋で大負けするのも禁止だ。
実体経済からかけ離れた取引も禁止されている。
4.非倫理取引
イスラムの教義に照らして被倫理的なもの
豚肉、たばこ、アルコール、武器、麻薬、売春、ポルノなどは禁止
エロ本は禁止だし、前述のパチンコ屋のお金が北の国に流れるのも禁止だ。
利子って何?
利子ってとこから説明するの? あぁ利子ってわかんない人もいるのか…と思うかもしれないが、実際利子ってなんだと思いますか? 何で利子はイスラム教で禁止されるのか。日本でも利率って法律で制限されているでしょう? あれってなんでだと思いますか?
まぁここで社会人7ヶ月目が答えを出せると思う?
そういうことは貴方自身で考えるものだと思わない?
利子の定義は自分で考えて欲しい。でも利子を考えるときにキーワードになるのは時間だ。
利子を考えるときに私の大学の先生は、「利子は流動性を失うことへの対価」だと言った。
銀行家への給与や彼らの毎日の飯を考えるときには「銀行のサービスの対価」と言われる。
また、利子は保険とも言われる。リスクが高い投資ほど、利子(利息)は多く得られる。
ただ現代では高リスクの投資をし、投資に失敗しても政府が銀行家を救済する例があり、市民が怒り狂ってウォールストリートを占拠するため、一概にはよーわからん。
とにかく、前述の3つを考えたときに利子は時間と不可分と考えられる。
利子は時間が長ければ長いほど高くなるのだ。
どうして利子を取ることは悪いことなのか
実は現代のように複利で利子を取ったりすることは、世界の長い歴史から見ればほんの最近のことかもしれない。そして利子を取ることは前述のイスラム教では禁止されているし、旧約聖書でも貧困層や自分の(宗教的なor民族的な)仲間から利子を取ることも禁止している。利子を取ることは良いとしても高利は常に規制されることが多かった。
日本でも江戸時代の金利は年利20%から始まり、後に15%になり、その後に12%になった。そして礼金や手数料名目で法定金利以上取り立てるのは禁止になった。
そして日本には徳政令というものがあった。昔は徳政令というのは借金が帳消しになることだと思っていたので、中学のときくらいは「こんなことしたら経済終わるな」と考えていたが、実際には続いている。これはどうしてかと考えたことがあった。
実は徳政令は利子付きの借金が対象である。借金の元のお金は返済できても利子(当時は利平)が膨らんでどうしょうもなくなってしまうからだ。
逆に言えばイスラム圏にもヒヤルによる有利子金融は存在した。
リバを貪るの意味
リバとは買い手と売り手の間の不公平な取引(ボるとか公正ではない取引も入るのかな?)や不労所得を禁止している。利子はこの不労所得にあたる。
ミヒャエル・エンデがこれに近いことを言っていた。お金は価値を交換するために存在する。そう5ドルをフィレオフィッシュセットと交換するように。しかし、1晩寝かせたカレーはともかくフィレオフィッシュセットは食べる気がしない。
そして銅や木材に替えても、年貢米をとってもそれらの価値は落ちるが、お金の価値は落ちない。お金持ちは人にお金を貸したり、銀行に預けて利子を取る。そして貧富の差は開いていくし、もちろんそれは社会不安に繋がる。
そして今利子を払っている人はどれくらいなのだろうか。私がビジネスを始めるときに、100万円借りて利率が5%だったら、商品を売るときには当然利子分高く売る。無利子で金を借りられたり、手数料分なら手数料は増えていくことはないから、手数料を全ての商品の数で割り算して売るだろう。実はものを買ってる人も間接的に利子を払っている。そしてもし政府が借金をしたら、その借金の利子を払うのは国民だ。
そしてそれもまた社会不安に繋がる危険性を秘めているのではないだろうか。
豚を飼えば土地が痩せ、砂漠化するように、たぶん中東の商人は知っていたのではないかと私は推測する。利子を取ればどうなるかということを…
利子…というもののフィクション性
無い袖は振れぬ。こういう言葉が我が国にはあるだろう。
利子というものは先ほど述べたように時間と不可分な存在だ。
利子の定義を調べてたときにWikipediaを覗いたらこんな例えがあったので紹介しておきたい。
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複利計算に関しては、復古主義としてではなく、近年の脱
資本主義的思想・運動からの疑義もある。マルグリット・ケネディはこのようなたとえを用いて複利計算の矛盾を問うている。
- ヨゼフが息子キリストの誕生のとき(西暦1年か紀元前4年かは不詳)に、5%の利子で1プフェニヒ(100分の1マルク)を銀行に預けたとする。
- 彼が1990年に現れたとすると、地球と同じ重さの黄金の玉を、銀行から13億4000万個、引き出すことができることになる。
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まぁこんな感じだ。もちろん地球と同じ重さなんて、そんなものはない。そしてこの人の著書によると、この経済発展はだいたい限界が来るらしい。その後は戦争なんかをしてリセットするんじゃないかな。私はまだこの本読んだことないけど。
そして利子計算の方法を良く知らないので下記のサイトに行って、100万円を年利5%で50年借りるっていうシミュレーションをしてみた。
http://www.loankeisan.com/
結果はこんな感じだった。
借入金額:100万円
ボーナス返済割合:0.00%
年間利子率:5.000%
貸付期間:50年
返済総額:2,724,316円
支払利息総額:1,724,316円
月額返済額:4,541円
年間返済額(月額返済額×12):54,492円
人類の経済が地球全体を覆っているかはわからないが、もし覆っていると仮定したら、利子分経済が成長すると考えると地球が2つと半分無いと5%の成長は維持できないらしい。
もちろんプラス成長もあれば、マイナス成長もあるし、実質金利にはマイナスだってある。
あなたが金を借りるときにマイナスの金利なんて無いだろうけどね。
経済はインフレし、成長するのかという疑問
私は経済学部で4年間学んだが、日本の年功序列システムから、奨学金というか教育ローン、年金システムまで、あらゆるものが経済の成長を前提として作られていた。だが、皮肉なことに私はマイナス成長も経験したが、インフレを経験したとこはないのだ。
でも金を借りれば金利は取られる。しかし、無限の成長は望めないのだ。
利子を返すためには、あるはずも無い利益を追う必要があるのかもしれない。
ここまで知っていれば、金利をつけて人にお金を貸すっていうのを禁止するっていうのは理解できない、ということはないだろう。
銀行からお金を借りれば利子を取られる。私たちは利子分を普段の生活の中で払っている。
現代の日本で生きていればこのようなことがとても自然な、当然のことのように思えたが、こうしたことを疑える機会を得るのは海外ならではであるということはない。日々を疑い、過去を探り、違う世界を見ることによって得られるだろう。
つづく